Night Talk vol.002

「幇間」
お陰様で2回目の依頼をいただくこととなりまして、今回も拙い文章で皆様の御機嫌を伺うことと相成りました。と、落語家みたいなスタートになってしまいましたが、今回はその落語家よりも珍しい『幇間(ほうかん)』という職業についてのお話。
『幇間』別名では『太鼓持ち』『男芸者』などとも呼ばれるこの職業は、芸者さんなどを助け御座敷の座を持たせる為、旦那衆に様々な芸を見せたり、おちゃらけて御機嫌を取ったりするお仕事です。
発祥は豊臣秀吉の側で御機嫌を取っていた武士のようで(諸説あり)、『太閤持ち』から『太鼓持ち』になったなどという説もあります。
10年前、お客様のピンチヒッターとしてお邪魔した銀座でも一二を争う老舗高級クラブの周年パーティーにて、幸運にもこの日本に数人しかいないという『幇間』の芸を見る機会に恵まれました。
緊張しながらお邪魔した店内のお客様は皆様社会に何かを成し遂げたであろう風情の60代…。
その中に30代の貧乏バーテンダーが一人…。だいぶ腰の据わりの悪さを感じる状況下なのは間違いありません。
肝心の『幇間』の芸というのは、踊りあり
、手拭いを様々な物に見立る芸あり、襖を使っての一人芝居あり、を軽妙なお話をお客様を交えながら展開するといったもので、古臭いながらも愛嬌のある感じに店内は大爆笑。大盛り上がり。
私自身もいつしか居心地の悪さを忘れ大笑いしていました。
ただ緊張の一瞬はまだ残っていたのです。
一頻り芸を終えた『幇間』は各テーブルを一つ一つ回り、おひねりをいただいたり、高級シャンパンをいただいたり、を始めるではありませんか。
高級クラブで払えるような金額など財布に入っていないただ一人の若造大ピンチです。
だんだん『幇間』が近づいてきます。
お隣では10万円以上するシャンパンが開いています。
なんの名案も浮かばないまま次は私のテーブルです。
そしていよいよ私のテーブルに『幇間』が!
…来ませんでした。
まるで私など最初からいなかったかのように素通りし次のテーブルに向かったのです。
まさにプロ。
そして若造への配慮。
『幇間』としての気概もあったでしょう。
夜の世界、とかく脇役として扱われることの多い男の仕事っぷりを目の前で見ることができ大変勉強になりました。
因みに『幇間』は馬鹿をメッキした利口しかできない職業と言われております。

ワインバー Razzo(ラッツォ)
いわき市平二丁目20-2
旭翠第3ビル1F
tel.0246-24-0135
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坂本 慎
いわき市出身
38才
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